【国際理解】-混迷する世界を読む

 

 今年も世界情勢は混迷の度を深めています。超大国の米国は自国第一主義を一段と鮮明にしており、盟主なき世界は求心力を失ったまます。政治的軍事的に台頭する中国の勢いは、国際社会とりわけ近隣諸国に期待とともに摩擦や緊張関係を生み出しています。人々の不安につけ込むポピュリズムの波は勢いを増し、欧州では極右政党が台頭しEUへの不信感が高まっているほか、移民・難民問題や英国の離脱などで混迷を深めています。基軸を失った今日の国際社会を取り巻く諸課題を明らかにするとともに、今後のあるべき国際関係について考えます


 

 第1回〔9月6日(木)〕

民主主義とポピュリズム

薬師院 仁志

 帝塚山学院大学 リベラルアーツ学部 教授

 そもそも「人民(people)」に参政権がなければ、ポピュリズムは成立しません。実際、煽動型ポピュリズムの先駆存在をヒトラーだとすれば、その母胎はヴァイマル憲法下の民主的選挙に他なりません。民主主義の定義は「全員による統治」であり、現代の間接民主制は全員の参政権を基本とするのですが、皮肉にも、全員による投票が全体主義を生んだのです。本講義では、この史実を直視した上で、今日の国際情勢を参考にしながら民主主義とポピュリズムの危うい関係を解説します

 

 

 第2回〔9月13日(木)〕

トランプ政権と国際社会

井口 治夫

関西学院大学 国際学部 教授

 トランプ政権が発足した背景に言及しながら、この政権が標榜しているアメリカ・ファーストの政策内容について歴史的な観点から考察を行います。講義を行う時点における日米関係、米中関係、米朝関係、米ロ関係、米欧関係などについて言及する予定であり、トランプ政権の現状分析を、米国の内政に関連づけて行う予定です。

 

 

第3回〔9月27日(木)〕

分裂の進むアメリカ合衆国-価値観の対立の行方-

井上 弘貴

神戸大学大学院 国際文化学研究科 准教授

 2016年11月のアメリカ合衆国大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンを制した共和党のドナルド・トランプが、翌1月に第45代大統領に就任してから1年半以上がすでに経過しました。5月上旬現在、民主党支持者の12%しかトランプを支持していない一方、84%の共和党支持者がトランプを支持しており、その評価は大きく分かれています。この講義では、そのようなトランプ大統領の支持不支持の背後にある、アメリカ社会のなかの様々な価値観の対立について考えます。 

 


 第4回〔10月4日(木)〕

台頭する中国と国際秩序

谷川 真一

神戸大学大学院 国際文化学研究科 教授

 中国の経済的・軍事的台頭が既存の国際秩序にどのような影響を与えるのかを展望します。近年、「中国モデル」、「中国化」といった言葉に象徴されるように、国内で一党支配体制を敷く中国の台頭は、リベラルな西洋的国際秩序を変容させるのではないか、という議論があります。ここでは、この中から代表的な見方を紹介するとともに、日本など先進諸国での「民主主義の危機」との関連について考えます。

 


第5回〔10月19日(金)〕

文在寅政権の外交政策と朝鮮半島情勢

 木村 幹

神戸大学大学院 国際協力研究科 教授

 2017年5月に発足した韓国の文在寅政権。当初はそのぜい弱な政権基盤もあり、その行く先に大きな憂慮が持たれていたこの政権は、当初の予想を覆す勢いを見せています。とりわけ外交面においては、今年4月に7年ぶりの南北首脳会談を実現するなど、大きな成果を上げつつあり、その活発な動きは朝鮮半島のみならず、東アジアの国際情勢を考える上でも大きな存在となりつつあります。それではこの韓国の動きはどのような要因に支えられ、それは今日の朝鮮半島を巡る情勢にどのような影響を与えているのでしょうか。本講義ではこの点について簡単に解説します。

 

 

 第6回〔10月25日(木)〕

巨大新興市場インドの課題-インフラ問題から考える-

福味 敦

兵庫県立大学 経済学部 准教授

 インドは、今世紀に入り急速な成長を見せたことで一躍世界の注目を集めていますが、一方で極めて貧弱な水準にあるインフラの改善が、持続的な経済発展を実現する上での最重要課題として指摘されています。本講義では人々の経済、社会活動にとって不可欠な電力に焦点をあて、「なぜ停電が頻発するのか」という素朴な問いを出発点とします。電力問題を切り口に、この国が抱える宿命的ともいえる困難を明らかにし、その克服に向けた試みを紹介します。

 

 

 第7回〔11月1日(木)〕

中国経済の現状と課題

萩原 弘子

兵庫県立大学 経済学部 教授

 1978年の改革開放政策開始以来、中国経済は高い経済成長率を実現し、その名目GDPは2010年に日本を抜き世界第2位となりました。しかし、2010年以降、経済成長率は減速の傾向にあり、中国は新たな経済発展戦略を進めつつあります。中国の経済成長率変化の背景には何があるのか、新たな発展戦略とは何かを考え、中国経済の抱える課題を検討し、今後を展望します。

 

 

 第8回〔11月8日(木)〕

岐路に立つEU

安井 宏樹

神戸大学大学院 法学研究科 教授

 2017年は欧州諸国で排外主義的な政治の動きが目立ち、欧州統合の行方も混迷の度を深めました。フランス・ドイツの国政選挙では既存の二大政党が低迷し、新興勢力が躍進するなど、戦後長らく続いてきた政党配置のあり方も大きく変わっています。EU離脱を表明した英国でも解散総選挙が行われ、与党保守党が過半数を失う敗北を喫しました。この講義では、そうした政治変容の背景と欧州統合の行方について考えていきます。

 


 第9回〔11月16日(金)〕

東アジア情勢とロシア

河原地 英武

京都産業大学 外国語学部 教授

 今日の東アジアは朝鮮半島情勢を軸として大きく変化しつつありますが、そこには当事者である韓国、北朝鮮のほか、アメリカ、中国、ロシア、日本の思惑が複雑に絡み合っています。東アジアで生じている変化は一体いかなる要因によって引き起こされたのかを明らかにするとともに、ロシアの対外政策がこの地域で何を目指しているのかを探ってみましょう。そして日本のとるべき立場について各人が自分の考えを持てるような講義を行う予定です。

 

 

 第10回〔11月29日(木)〕

混迷を深める中東情勢を探る

中川 恵

羽衣国際大学 現代社会学部 教授

 2014年にシリア・イラクにIS(イスラミック・ステート)が台頭して以来、テロは欧米・アジアを含む世界各地に拡散しました。各国の掃討作戦により、ISはほぼ壊滅状態となりましたが、テロの勢いは依然衰えていません。IS掃討作戦を遂行した米露トルコなど各国の思惑が複雑に絡み合う中で、とりわけシリアの混迷はさらに深まる様相さえ見せています。豊かな文化と文明を育んできた歴史を持つ中東は、なぜかくも紛争が絶えない地域となってしまったのか。講演では2010年末からの「アラブの春」以降の中東・北アフリカ地域をめぐる米露欧州諸国の思惑と中東諸国の状況を読み解きましょう。


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